五感を磨く

当店は羊やジビエを注文されるお客様がほとんどで、
前菜で魚介や野菜主体の料理を楽しんでいただき、
その後、しっかりと肉料理を堪能していただいている。
次々と入る肉の注文をこなしながら、
最近感じることは・・・
料理人ほど五感をフルに使う職種はないのではないか?ということ。
見て触って脂や赤身の状態を確かめ、
肉のにおいをかいで熟成加減を見極め、
焼いている音を聞きながら、焼き色や火の通り加減をイメージして、
焼いた肉汁を加えたソースを味見して・・・。

40代後半になり、辞書や文庫本を見るのは
メガネなしではちょっときつくなってきて、
イベントなどで徹夜した後の回復力は20代や30代に比べるとちょっと落ちて、
体力はなんとか現状維持が精一杯。
けれど2、3年前より肉のさばくスピードや焼く精度は上がっていると思うし、
素材と真剣に向き合っていると毎日小さな発見もある。
経験で蓄えた引き出しの中から、逆に若い頃にできなかった大胆な発想もできる。

ワインを試飲して昨日まで感じられなかった香りを
見つけた時はちょっとうれしいし、
新しい野菜を目の前にして、新作を考えるのはとてもわくわくするし、
それが完成し、お客さんに食べていただいき、
喜んでもらった時は心の中で小さなガッツポーズ!!
焼きあがった羊や鴨の表面を触りながら
火の通り具合がベストかどうか見極める時はいつもドキドキするし、
焼けたパンを釜から出す時のパチパチとはじける音を聞いたり、
なんともいえないこうばし香りをかげるのは
パンを焼いた者だけへのささやかなご褒美だし・・・。

これからも楽しみながら五感を磨いていこう。

(2010.11.11記)

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