ケケとヴァンサン


17年前、僕は28歳から29歳にかけてボルドー地方の貴腐ワインで
有名なソーテルーヌの畑から程近い、
小さな村の伝統的なボルドー料理を提供する2つ星の
オーベルジュレストランで働いていました。
オーナシェフは40代後半でその下に僕と同じ年頃の2人のシェフがいて、
お菓子以外の主なセクションは彼ら2人が中心になり店が動いていました。
一人は28歳のエリック。でもみんなからは
いつも“ケケ”とニックネームで呼ばれていました。
もう一人は26歳の“ヴァンサン”。
フランスはアプランティー制度(徒弟制度)がしっかりしていて
14,5歳から調理師学校とレストランを2週間ごとに交互に通い、
理論と実践を学び、社会人に必要な道徳等も身に付けていきます。
20代後半はもうすでに10年以上のキャリアを積み、立派な料理人です。
僕が入店当時は2人とも同じ年頃でも僕よりもずいぶん大人に感じました。

ケケはとても器用でピアニストのような繊細で長い指で
サーモンや春先にジロンド川の河口で獲れる名産の
生きたアローズ(川ニシン)やランポア(ヤツメウナギ)を
和食の職人のように上手に卸していました。
ボルドーへのマルシェの買出しやサービスとの
コミニケーション係り、厨房のシフト作りも彼でした。

一方ヴァンサンは剛腕シェフ。
肉のローストやソース作りは天下一品。
ポイヤック産の羊をさばく手ほどきは彼に習いました。
またボルドーで開催された2年に一度のワインEXPOの
500人分の鳩料理を担当した時は
ヴァンサンを中心に4人で一日ががりで鳩をさばいたのを思い出します。

日本に帰ってきてラ・サンテを開店する時やその後も1度遊びに行きました。
その後それぞれ違う店に移り、
もう何年かに一度、手紙でやり取りをするだけになってしまいましたが、
彼らを通じてフランスの料理や素材のすばらしさを体得したのと同時に
フランス人の人間としての温かさや懐の深さを人として学びました。




秘密の場所によくきのこ狩りに連れて行ってくれたヴァンサン




ケケを中心に若いスタッフを囲んで




ラ・サンテを開く前に報告を兼ね遊びに行った際のケケとヴァンサン


(2008.12.05記)



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